「ひめの」はゾイシアンジャパン株式会社が保有する国内屈指のノシバ遺伝資源コレクション「M&Yコレクション」(註1)から、約10年間の厳しい長期評価試験の結果選び抜かれた日本芝で、植付け後の管理を省く7つの不思議な特性を有しています。

■M&Yコレクション全景
註1)
 M&Yコレクションとは、ゾイシアンジャパン株式会社が所有するノシバの遺伝資源コレクションを意味します。北は北海道道南から、南は波照間島、与那国島まで踏査、随時、各自が蒐集したもので、平成4年5月に合同して整理しました。その後、新しく開発されたもの(エルトロ、みやこ等)を加え、360系統が蒐集されて比較試験圃として現在も観察が続けられています。
 なお、この試験圃の位置は広島県の中山間部で標高が650m、日温較差が大きく、最低気温はマイナス13℃を何度も記録する寒い場所で温量指数は87です。そのため耐寒性などはもとより、生育の優劣などがより顕著な差を発現し、結果的な偶然(幸運)とも言えますが、野外の比較観察には非常に適した環境であるということがよくわかりました。(温度の高い場所やビニールハウスの中などは比較観察が難しい)
 1990年4月に鹿児島県薩南諸島などで採集の後、2年以上ワグネルポットに植えられたまま経過したものが20種ほどあり、「ひめの」はその中の1種です。
 長期観察の結果、採集地近隣や日本全国からのコレクションのうち、「ひめの」はどの系統にも属さないものであることがわかってまいりました。このことは、当社研究室長・長沼和夫博士によって平成13年6月2日の日本芝草学会春季大会で発表されましたが、詳細に遺伝子の調査をした結果、キヌシバやコウライシバ等との交雑の形跡はなく、DNA分類学的特性はノシバであり「ひめの」はノシバの突然変異と考えられることがわかりました。


ヒメノを含むDNAフィンガープリント
 実際に比較観察上、緑濃く、短葉で穂が出ないことだけでも類似したものがありませんし、以来、採集現地に3度も出かけて広範囲を調査しました。踏査の度ごとに、似たものを数種持ち帰り観察しましたが全部出穂の多い別種であり、再度発見することは出来ませんでした。即ち、その土地の野生種であっても周辺の長草化、道路の舗装(かつて轍の間のものを採取)や土地整理など短年次の著しい植生環境の変化のため、生育可能な場所が極端に少なくなり絶滅したものと想定されます。